吃音の概要
第2号では言語聴覚士のぽこ様より、吃音の概説と吃音がある人との関わり方についてご紹介いただきました。
簡単に振り返っておきますと、吃音症は発達障害の一つで、中核症状は①連発(繰り返し)、②伸発(引き伸ばし)、③難発(ブロック)の3つがあります。
主に幼少期に発症し、その約7~8割は自然治癒しますが、残りの2~3割は成人まで吃音の症状が残るという統計が出ています。
そして、吃音がある人と会話をする際には、話し方のアドバイスを行わず、相手が話し終わるまで待つことが大切であるということでした。
見えない吃音
今回は「言語症状以外の吃音」をテーマにお話ししていきます。
吃音があると一口に言っても、吃音が発生する頻度や吃音の継続時間は人それぞれです。
つまり、会話していてもほとんど吃音が出ない方も多くいらっしゃいます。
では、この一見吃音が出ていない人は、何回も吃音が出る人と比べて吃音の悩みが少ないと言えるでしょうか?
その答えは……「No」 です。
想像してみてください。
もし吃音が原因で、学校で友達にからかわれてしまったら
「どもってしまったらまた友達にからかわれてしまう……」
と思ってしまいますよね。
そんなとき、苦手な音を回避する「言い換え」をすると、どもりにくくなるのです。
例えば、「ありがとう」が言いにくいと「サンキュー」と置き換えるといったような具合です。

多くの吃音当事者に話を聞くと、この「言い換え」をしたことがあると言います。
そのため、言い換えにより比較的スムーズに言えることとなりますが、本来話したかったことが話せず悩んでしまうということが起こり得ます。
また、固有名詞など言い換えが不可能な単語も数多くあるため、言い換えの限界を感じてしまい、話すのをやめてしまったり、場合によっては社交不安障害を併発してしまったりすることがあります。
つまり、吃音症は言語症状という目に見える問題だけでなく、吃音への不安・恐怖などといった目に見えない問題があるのです。
このような複雑な吃音は氷山のモデルで表現されることがあります。
このモデルは水面上と水面下で分けられ、水面上は言語面(吃症状)、水面下は心理面(発話恐怖など)と言われます。
吃音はその言語症状の重さ(見える部分)だけを捉えてしまいがちなのですが、言語症状だけが本人の抱えている吃音の問題とはならないのです。
一見吃音の言語症状自体は軽く見えたとしても、本人は
「言い換えをして苦手な音を避けているから軽く受け止められるけど、本当は言いたいことが全然言えないし辛いよ……」
と感じているかもしれないのです。
では、当事者に対してどのような対応を取ればよいのでしょうか。
よく、「私実は吃音があって……」と勇気を出してカミングアウトしたけれども、相手からは
「そんな風に見えないよ。大丈夫!気にしないよ!」
と言ってくださる方がおられます。
その方にとっては善意で声を掛けてくださったのだと思いますが、その言葉によって問題にされず突き放されたように感じてしまう場合があります。
その結果、誰にも相談できずに一人孤独に悩み苦しんでしまうかもしれません。
そのため、安易に「大丈夫」と声をかけるのではなく、吃音についてカミングアウトされたり相談されたりしたときには、ぽこ様のお話にもあったように、まずは最後まで話を聞くこと、そして当事者によってどのように対応してほしいかが異なるので
「あなたはどうしてほしい?」
などのように吃音当事者の希望を聞くことによって、当事者の気持ちは凄く軽くなります。
それによって心理的な問題が軽くなり、総合的な吃音の悩みが小さくなることにつながります。
最後に
「吃音は言語症状だけが問題ではない」ことをご理解いただき、当事者と会話をされる際にはぜひ実践いただけますと幸いです。
周りの環境が変化するだけでも本当に気持ちが楽になるものなのです。

伊藤 孝 吃音の息子をもつ父親
吃音を多くの方に知ってもらいたいと稲田さんと一緒に活動しています

稲田 悠人 吃音当事者・国立大学法人職員
富山言友会等の吃音団体にて当事者の支援活動を行うとともに、勤務先の富山大学にて吃音の啓発活動を実施しています
