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特集

【特集】まほらノートってどんなノート? どうやってうまれたの?

2025.12.14


発達障害の当事者の声から始まったノートづくり

杉山:大栗さん、はじめまして。
今回インタビューを担当するソフィアと申します。よろしくお願いします。
夫婦そろってまほらノートが好きで、愛用しています!

大栗:ありがとうございます、うれしいです!
まほらノートを作っている大栗紙工の大栗佳代子です。
よろしくお願いします。

杉山:夫は予定を書いたり、私は頭の中にあることや今日やりたいことを書いています。
他のノートだとプレッシャーを感じるものもあったのですが、まほらノートは「好きに書いていいんだ」という安心感があるんですよね。
早速、このノートがうまれたきっかけを聞きたいです。

大栗:以前、とあるセミナーを受けに行った際に、講師の先生に「私の会社はノートを作っています」と自己紹介をしました。すると、
「発達障害の人たちが一般的なノートを使いづらいようなので、話を聞いてみませんか」
というご提案をいただいたのです。
先生は発達障害の自助グループを応援されている方なのですが、「一般的なノートを使いづらい」という方が何人もいらっしゃるということは、今まで普通のノートを作ってきた私にとって目から鱗のお話でした。
それがきっかけで、先生から自助グループの方々におつなぎいただき、まほらノートの企画が立ち上がりました。

杉山:今までいろいろなノートを試したからこそ、まほらノートが自分に合うということがわかるんです。他のノートに比べて精神的に負担が少ないし、いろいろなことに使えるのがすごく気に入っています。
紙の色選びなど、開発段階で苦労されたこともあるのではないですか?

大栗:そうですね。私たちはこれまで下請けでノートを作ることが多く、依頼元から企画書が届き、その通りに作るという仕事内容でした。
そのため、自分たちで企画や開発をしたことがなかったんです。
ですから、「企画力がない」ということが最初の大きな課題でした。

本当に求められていたのは「シンプルさ」

「白い紙がまぶしい」という方がたくさんいるということは伺っていたので、そこを解決するというコンセプトは絶対に外せませんでした。
でも、当事者の方々にお話を伺っていくと、ほかにもさまざまな改善点が出てきたので、「まずはとにかくお話を聞こう」と思い、当事者の方に向けてアンケートを実施し、それをまとめていくことにしました。

その中で、紙の色の問題だけではなく、通常のノートだとナンバーや日付の欄があったり、イラストが描いてあったり、糸綴じの場合は糸の切れ端が気になって集中できない……など、本当に「シンプルなノート」が求められているのだということが見えてきました。

ほかにも、「罫線に沿ってまっすぐ書けず、あとで見直した時に何を書いているのか自分でもわからなくなり、書いている意味がなくなってしまう」というご意見がありました。
「シンプルさ」の次に課題となったのは、「書いている場所を見失わないようにする」工夫でした。

書いている場所を見失わないための工夫

大栗:同じ線ばかりだと罫線を見失ってしまうのであれば、太い線と細い線で強弱をつけてみたり、罫線ではなく網掛けで色を分けたりと、さまざまなサンプルを作りました。
それを当事者の方に選んでいただき、課題が出るたびに、それを解決するための試作を繰り返しました。

当事者の方のご意見を聞かせていただくことで、使いづらい部分を少しずつ改善していくことができました。

杉山:使う側として「どうしてこんなに使いやすいのか?」ということを深く考えたことがなかったのですが、当事者の声をこれだけすくい上げていたなんて驚きです。
この1冊にそんなストーリーがあったんだと知れてうれしいです。

大栗:まずは叩き台となるものがないと、当事者の方にとっても、私たちにとっても課題が見えてこないと思っていました。
ですから、まずは作って意見を出していただくことを大切にしていました。

「作ってよかった」と思えた瞬間

杉山:開発が終わり、実際に発売するにあたって、不安や期待はありましたか?

大栗:一生懸命作りましたし、たくさんの方が関わってくださったので、「成功させたい」という気持ちはとても強かったです。
ただ、実際に販売して「受け入れてもらえるのか?」という点については、やはり不安もありました。
発表後、「当事者の方々の話を聞きながら作った」という点に興味を持っていただき、さまざまなメディアで取り上げていただけたことで、とても安心しました。

杉山:実際に使われた当事者の方の感想や反応はいかがでしたか?

大栗:ありがたいことに、喜んでいただける声が多かったです。
販売経路がなかったため、自社でECサイトを作って販売していたのですが、購入時の備考欄にお喜びの声を記入してくださったり、サイトのお問い合わせから感想を送ってくださったりしました。
今までは下請けが中心で、感想をいただく機会がほとんどなかったので、「作ってよかった」と心から感じました。

原因に気づけることで、書くことが好きになる

大栗:「字を書くことがつらい原因がわからなかったけれど、まほらノートなら字を書くことができた」という声も多かったです。
自分自身で、字を書くことが苦手な原因に気づいていない人も多いということを知り、まほらノートを通して、そうした気づきを持ってくださった方がたくさんいらっしゃったことがうれしかったです。

発達障害のあるお子さんを持つ保護者の方からは、
「なぜ子どもが字を書けないのかわからなかったのですが、紙の色が原因だったとは思いもしませんでした」
というご感想もありました。

杉山:私も子どもの頃はノートに字を書くのが苦痛でしたが、まほらノートを使うようになってから自分の字が好きになりました。
子どもの頃にまほらノートがあったら……と思います。
子どもの頃は何もわからず、「なぜ自分はできないのだろう」と自分を責めてしまうことが多かったです。
でも、このノートはその原因を取り除いてくれて、本当にありがたいと思います。

ノートを忘れた時はタブレットに書くこともありますが、やはりデジタルとアナログは違うと感じます。
ノートに書くことが癒しになったり、頭の整理になったりする。
それが私にとってのアナログの魅力ですが、大栗さんが感じるアナログの魅力は何でしょうか?

大栗:私自身も手書きが好きです。
手で書く方が早い、という理由もありますが、書くことで記憶に残りやすかったり、考えながら書いていたりする感覚があります。

もちろんデジタルにも助けられていますが、記憶に残っていたり、ひらめきが生まれたりするのは、手で書いている時が多いですね。

振り返った時に、「あの時こんなふうに書いていたな」「あの時こんなことを考えていたな」と、記憶と行動がつながることも多いです。
仕事と切り離して考えても、ノートに書くこと自体が楽しいですし、自分に合っていると感じています。
過去に書いたものを見返すのも好きですね。
ページがあるということ自体が、とても素敵だと思っています。

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