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算数障害(ディスカリキュリア)とは? 3月3日は「Dyscalculia Day」

記念日に疎い私が、初めて耳にした日

3月3日。
世の中がひな祭りの華やかさに包まれるこの日が、実は世界的に広がりつつある「Dyscalculia Day(算数障害の日/算数障害啓発の日)」でもあることを、私はつい昨日まで知りませんでした。

欧州のディスレクシア関連団体(European Dyslexia Association)は、3月3日を “International Dyscalculia Day” として位置づけ、啓発のタイミングを国際的にそろえることを呼びかけています。
(参考:European Dyslexia Association「Dyscalculia Day – March 3」

実を言うと、私はもともと記念日やイベント事への関心が薄い気質です。
クリスマスや誕生日、周年記念などの行事はもちろん、世の中に数多くある「〇〇の日」という啓発デーに対しても、「知っていてもスルー」が基本の姿勢でした。

そんな私が、今日という日の存在を知り、そして意識することができたのは、ピアパートナーとして共に活動している合同会社Ledesone(レデソン)の代表・Tenさんとお話ししたことがきっかけでした。

この記事では、算数障害啓発の日の話を入口に、算数障害(ディスカリキュリア)について調べ、考えていきたいと思います。

算数障害(ディスカリキュリア)とは何なのか?

では、そもそも「算数障害(ディスカリキュリア)」とはどのような状態を指すのでしょうか。
ざっくり言えば、数字を理解し、扱うことに関わる困難が長く続く特性です。

算数障害は、LD(学習障害)の一つで、読む・書く・計算といった学びの中でも、特に「数」に関わるところで困りごとが出やすいとされています。

そしてこれは、単なる「数学が苦手」というレベルではありません。
数字の意味をつかむことや計算の手順が定着しづらく、「数の比較」「見積もり」「位取り」など、数字を扱う基本の部分でつまずきやすい、と説明されることもあります。

あなたの身近にも、「数学が苦手」と言う人はたくさんいると思います。
でも算数障害は、いわゆる“苦手”の話だけでは収まりません。

  • 数の概念が掴めない:「3」という数字を見たとき、それがリンゴ3個分という量としてイメージできない
  • 計算のルールが定着しない:繰り上がりや繰り下がり、九九などの基本的な計算手順が、どれだけ練習しても抜け落ちてしまう
  • アナログ時計が読めない:針の位置が示す「時間」という抽象的な概念を理解しづらい
  • お金の計算・管理が難しい:お釣りの計算が間に合わない、予算の感覚が掴めない

もちろん、困りごとの出方は人によってさまざまです。
ただ、ここで大切なのは、これは本人の努力不足や、勉強をサボった結果ではないということ。
また、知的な遅れがあるという話とも別で、ある分野だけが著しく困難になることがある、という点が重要です。

子どもの頃から困りごとが続いていても、周りに理解されず、大人になってから気づく人もいます。
そして、日常生活のあらゆる場面に「数字」が溢れている現代社会では、この困難が当事者の自己肯定感を削いでしまうこともあります。

当事者ができる工夫(工夫で困りごとを軽減)

算数障害(ディスカリキュリア)の困りごとは、「努力で克服する」よりも、道具や仕組みで補うほうが、生活が安定しやすい場面があります。
ここでは一例ですが、当事者がよく使っている工夫を挙げます。

  • 計算は手でやらない前提にする:電卓、スマホ計算、表計算などを常用する(暗算を自分に課さない)
  • 時間は見える形に変える:アナログ時計が難しい場合はデジタル表示/タイマー/予定のリマインドで補う
  • お金の扱いはルール化する:キャッシュレス決済、予算を週単位で固定、家計簿アプリ、封筒分けなどで判断回数を減らす
  • 桁・位取りを見た目で助ける:3桁ごとに区切る書き方、色分け、罫線、桁を揃えるテンプレートを使う
  • 見積もりは感覚ではなく参照で:よく買う物の価格帯・時間の目安をメモしておき、そこから当てる

大事なのは、「できるようになる」より先に、困らない形に環境を作ることです。

周囲ができること(急かさない/暗算を前提にしない)

算数障害は外から見えにくく、本人も「ただ苦手なだけ」と誤解されやすい特性です。
周囲ができることは、特別なことよりも前提を変えることです。

  • 暗算・即答を求めない:「今ここで計算して」と急かさず、電卓やメモを使う時間を確保する
  • 手順を“言葉+見える形”で伝える:口頭だけでなく、箇条書き・図・チェックリストなどで補助する
  • 数字の指示は具体化する:「だいたい」より「◯時まで」「上限◯円」など、条件を明確にする
  • 間違いを能力と結びつけない:ミスが出たときに人格や努力の話にせず、仕組みや環境の問題として一緒に調整する
  • 本人に何が助かるかを聞く:同じ困りごとでも、助かる方法は人それぞれ。推測で決めつけない

※ここで挙げた内容は一般的な例です。困りごとの出方や有効な工夫は人によって違います。生活や学習で強い困難が続く場合は、専門家に相談することも選択肢になります。

Ledesoneさんが照らす、インクルーシブな未来

今回この記事を書くきっかけとなった『凸凹といろ。』のピアパートナーである合同会社Ledesone(レデソン)さんについてご紹介したいと思います。

Ledesoneさんは、「ひとりひとりが過ごしやすい社会をともにつくる」というミッションを掲げ、当事者の視点を活かした取り組みを行なっている団体です。
そして、代表のTenさんご自身もまた、LD・ADHDの当事者の一人です。

Ledesoneさんの活動は、情報の発信にとどまらず、文字だけに頼らないインクルーシブデザイン(多様な人を置き去りにしない設計)の提案や、当事者が安心して集まれる「おとなLDラボ」の運営を行っています。

おとなLDラボのトップページ

「おとなLDラボ」の関連記事:「数字の意味がわからない」世界で、自分らしく生きる
算数障害当事者の大西あかねさんのインタビュー。「数字が量として入ってこない」という感覚や、それをどう補って生活しているのか、具体的なお話が掲載されています。
👉 記事を読む:おとなLDラボ

「おとなLDラボ」では、18歳以上のLD当事者(診断はないが似た特性のある方も含む)が交流し、日常の困りごとや工夫を共有できるオンラインコミュニティも運営されています。

ADHDやASDの当事者コミュニティは、以前より目に入る機会が増えてきた一方で、LD当事者のための交流の場は、まだまだ数も少なく、見つけづらいと私は感じています。
だからこそ、こういった場が用意されているのはとても貴重だと思いました。
同じようなつまずきを抱えてきた人がいると知るだけで、「自分だけじゃない」と思えて、孤独感がやわらぐことがあります。
算数・計算の困りごともテーマにできる場として、毎月第4金曜日にはオンライン交流会も開催されています。

さらに、これらの活動で得られた知見は自治体との取り組みにも活かされています。
大阪府堺市では、合同会社Ledesoneの協力のもと市職員向けにLD研修が実施され、算数障害を含めたLDに関することが紹介されました。

こうした発信や場があるおかげで、私たちは今日という日を知ることができ、そして当事者以外では想像しづらく、見落としがちな「見えづらい困難」について考える機会を得ることができるのだと思います。

まずは「知る」ことから

世の中には、あらゆる困りごとのある人たちが手を取り合い、世の中に存在を知ってもらうための活動をしています。
社会に知ってもらうこと、そして「当事者同士が、お互いの存在を知る」ということ。

啓発デーは、社会へのアピールであると同時に、孤独の淵にいる誰かに向けた「あなたは、決してひとりではない」という合図なのだと思います。

3月3日。
今年からは、カレンダーに入れておきます。
忘れない努力じゃなくて、忘れても大丈夫な形で。


合同会社Ledesone:インクルーシブデザインで、ひとりひとりが過ごしやすい社会を。
https://ledesone.com/

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『凸凹といろ。』のもうひとつのかたち。
原点である紙のフリーペーパーも、ぜひ手に取ってみてください。

編集長・デザイナー

『凸凹といろ。』の発案者で、代表。全体の企画、編集、デザインなどを行なっています。 時間感覚、短期記憶の弱さ、衝動的な発言(失言)や不注意など、自身の発達特性が原因でうまくいかず、 “人と働く”ことは早々に諦め、現在はフリーランスでデザイナー、イラストレーターとして仕事をしています。 やりたいこと、気になることが多すぎて手が回らないのが悩み。 タスク管理や見通しのつきづらい仕事にはなかなか手をつけられないなど困った特性がある反面、思いつきや衝動で動くことも多く、一旦動き始めるととても行動が早い。 雑談や人付き合いへの苦手意識が強いが、基本的に人が大好き。

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